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デニス・ティラン先生の特別セミナー

英国の妊産婦ケアにおける第一人者と言っても過言ではないかと思います。

IFAからも、妊産婦のケアをしたいのであれば、専門家の指導を受けるように。と言われていて、その専門家リストのトップの方です。

日本語訳されている本は、めちゃくちゃ古い出版物で、特にリサーチ情報が古いので、新しいリサーチを読んで欲しいと言われました。もちろんです。精油のデータも古いです。でも、紙の書籍はコレしかなく、英語で書かれているものは、紙で買うと読めない。Kindleで辞書引き引き読むのです。と言う言い訳をして、紙の本にサインをいただきました。紫の表紙の本も、ちょっと古い。最新版は、2022年12月に出版されてて、多分、産後ケアに比重の高い本です。

デニス先生、ご自身は、最も得意とする補完療法はドイツ発祥のリフレクゾーンセラピーなのだそうです。来日してすぐのクリニックデーで、私も足裏を見ていただいのですが、まさに、それが、予防と予後をサポートする補完療法と呼ぶに相応しいと、私が感じるポイントでしたが、『私の体の弱点を気付かされる』と言うことです。ここが悪いよね。ではなく。

私の場合は、いたってヘルシーと言うことで、何も問題もなくどこかが痛いと言う事もなかったのですが、くるぶしに赤みが出ている。しかも両足とも似たような場所にある。ということで、坐骨神経痛の経験はないですか?それか、日常的に椅子に座りっぱなしの生活ですか?と言う話でした。

まぁ、椅子に座っていることは多いので、そのせいかな?と言うことで話は流れたのですが、実は、その日の帰りには、足の着き方に違和感があり、何か矯正されているような感覚、翌日の朝は、腹斜筋と内転筋が筋肉痛な上に、足を組む癖があるのですが、組みにくくて、組みたいけど組めない。みたいな、もう、なんとも言えない不思議を体験しました。

日本と英国の法律上の違いがあるので、同じことが同じようにできると言うわけではないのですが、とても参考になります。
英国は教育と医療は無償であるべき。と言う理念なので、日本のような国民皆保険はありませんが、患者が病院への支払いすることはありません。しかし、だからこそ、補完療法に対しての意識も違うのかもしれません。

IFA養成校時代から知っていて『いつか』受けてみたいと思っていたアネルズ先生の妊産婦ケアコースにて、一緒にデニス先生の講座を受講した皆様との写真。
コースをまるっと一緒に受講したのは6名かな?半分が助産師さんで、助産師さんの対応(普段とは違って職業スイッチが入るのが面白い)は、とても勉強させてもらいました。アロマセラピストが、同じ様な対応をする必要も、専門外なのでできることもないと思うのですが、心を配るポイントも掴んだ気もして、本当に日に何十人も妊産婦さんと出会う事はないので、そうしてこられた方のどっしりと安定した雰囲気と言うのは心地よいものだと思うので、目指したいと思います。

英国での助産師のポジションは、正常分娩において産科医の出番なし。と言うくらい、医学的に問題がない限り、すべて助産師が診るそうです。つまり、正常な経過である限り、妊婦は産科医に1度も合わずに助産師と二人三脚で出産をし、助産師は産後28日まで経過を診ます。デニス先生は、何十年も助産師として現場に立ち、大学で助産師を指導してこられていて、近年の妊産婦に対する変化を話してくださいましたが、奇しくも、日本もまったく同じような状況であると思いました。

つまり、女性が自分自身の人生設計をした際に、何歳で妊娠して出産してと計画していたり、〇月〇日にこういう出産方法で出産したい。など、自分の身体なのでコントロールしたい、コントロールできる。と考えている妊婦も多くなってきているとの事、もちろん、何月何日までに仕事に戻らないといけないとか、職場に復帰したら妊娠前と同様にキャリアを取り戻したい。と考えている方も多くなっているとの事でした。デニスは、「助産師は、できるだけ自然な流れの分娩をしたいと考えているので、妊婦との間にギャップが生まれます。」と続けられました。
しかし、若い助産師の中には、若い妊婦に共感できる自然な流れを待てない助産師も増えてきているということを話されていました。医療的な理由のない帝王切開も増えてきているそうです。
いずれにしても、自然の流れに沿わずに行う分娩は、母体にも胎児にもそれなりにリスクも負担もあると、そんな中で、できるだけ自然な分娩を待てるように、心と身体のバランスを取る為に補完療法の介入が試みられるのだが、知識も技術もない人の、精油の使用によって発生した問題により、補完療法が否定されるケースが現在でも起こっている。
例えば、出産が遅れており、促進を試みようと、アロマテラピーを聞きかじった助産師がクラリセージを使ってみた。最初こそ、順調に促進されたようだが、知識が足らずにすぐにオーバードーズになっている事を理解できず、陣痛がおさまってしまい、順調に経腟出産が進まなくなってしまった為に、緊急帝王切開に移行したが、結果、死産になってしまった。2022年に発生した事案で、訴訟準備が行われている。
つまり、何十年も前の話ではなく、安易に学習せずに使用する人によって引き起こされる残念過ぎるこのような問題は、正しく安全に利用できる知識と技術があれば、起こらなかった事件であり、また、安易にアロマテラピーに手を出す前に助産師にはできることがあったはずだ。と、デニスは話している。
これは、アロマテラピーが本質的な問題に対してではなく、スケープゴートのようにつるし上げの対象になりやすい事も示唆している。だからこそ、遊びやファッションではなく、クリニカルなものであるべきで『何に働くのか』『どう働くのか』を考える必要がある。そして、プロフェッショナルとして現場での使い方のスーパーバイザーになる必要がある。精油が万能ではない事、用法用量がある事をきちんと学び、しっかりとアドバイスができることが重要で、プロのアロマセラピストがアロマテラピーで出来る事とできない事をしっかりと指導できる事、その周知も大切である事を伺いました。
2022年12月に英国の医療従事者のストライキが発生して、延期されているのだが、なんちゃってアロマテラピーによって死産した当事者であり、訴訟を起こそうとしてる夫と、デニスは、ラジオ番組内で補完療法の安全性に関する対談をする予定が延期されているとのことで、続報もしっかりと追いたいと思う。

そして、もうひとつ、今後の課題になるであろう。ジェンダー多様性による妊産婦の呼称変更事案。日本では、まだまだジェンダーに対する考え方が旧石器時代なのですが、少しずつ、Allyも増えてきているかと思います。
このジェンダー多様性によって、妊娠している女性ではなく「妊娠している人」と言う概念で妊娠出産に向き合う必要性がある話で、デニスの話は締めくくられました。

助産師も、産科領域で補完療法に携わる人も、Pregnant People に向き合う事になります。